そら飛ぶ映画好きのひとりごと。

感想は抽象的であり、単なる感想に過ぎません。

ガール Girl

トランスジェンダーバレリーナの話です。

 

ショッキングなシーンに気を取られ、この映画の表現の細やかさに心動かされたことを忘れてしまいそうになりました。

なかなか生々しく、衝撃的なシーンに打ちのめされてしまいました。

男性の象徴を自らの手で切り落としてしまいます。

序盤に、ピアスの穴を自分で開けるシーンがあるのですが、主人公ララは氷をちょっと当てて、たったそれだけで耳に強引に穴を開けてしまいます。その初めのシーンを見ているからこそ、あの場面で氷が登場した瞬間、まさか、この子は・・・!ということになるのです。

 

あらゆる場面で、彼女が身体的な痛みに対して鈍感というか、自分を痛めつけることを躊躇わずに繰り返し行なっていることが描かれています。

バレエの練習でも、足がとんでもなく悲惨なことになっているのに踊り続けたり、テープを局部に貼り付け皮膚をボロボロにしたり、ピアスも強引にあけたり・・・。

 

彼女は、身体的にも精神的にも、痛みに耐えすぎているように見受けられました。

悩みは誰に対しても口にしない。彼女は常に一人で、孤独に生き、どうにもならない苦痛に耐え忍んできたのだと思います。

だって、自分の気持ちなんて話したところで真に理解してもらえることなんてないのだから・・・。彼女が頑なに心と体の痛みに耐え、周りに心を開かず、思っていることを口にしないでいる姿を見ていると、医療という科学的な力によって女の子に近づくことは出来て、そこに希望を感じてはいても、真に女の子になることは出来ないということを悟り、心の奥底で諦めているようにも感じられました。

 

男性の象徴を切り落とした後、一命をとりとめた彼女は自分の姿を鏡ごしに見ますが、その姿はぼやけていました。

たとえ男であることを示すものがなくなったとしても、真に、100%女の子ではないのです。

心も見た目も女の子なのに・・・

一生、満たされない気持ちを抱え生きていくしかない、そういったマイノリティの方々の孤独感を想像すると、非常に辛いものがある。

寄り添うことは出来ても、普通である私たちには真に彼らの気持ちを理解することは出来ない、そういうもどかしさにも打ちのめされました。

 

カメラワークもほぼ主人公ララのアップで、周りの様子がほとんど見えないように撮られていました。

まるで、ララは世界から隔絶されているかのように。