そら飛ぶ映画好きのひとりごと。

感想は抽象的であり、単なる感想に過ぎません。

スパイの妻

10月に入った頃はまだ半袖Tシャツでも少し歩けば汗ばむほどだったのに、最近はすっかり肌寒く、本格的に秋の陽気になっている。紅葉が見たく、各地の名所を調べるなどしてこれからの楽しみに一人うきうきとしている。

 

そんな中、先週スパイの妻を見た。なんというか、洒落ている映像、音楽であった。ドラマチックなサンスペンス劇と言ったところか。監督の腕の良さを感じた。

ホラー映画的な、怖さを引き立てるような場面があった。高橋一生に尋問をする東出昌大の顔に深い影がかかって、いかにもサスペンス的、ホラー的な音楽が流れている。そんな場面を見て、ドラマチックな映画的演出に胸が高鳴った。

 

脚本も確かに、意外な展開となり面白いことは面白い。だがこの映画は、役者の少し仰々しいような演技や、演出、音楽、ファッションなどを楽しむ映画なのではないかと感じた。

 

あの時代の神戸がいかにモダンで洒落ていたか、というのを感じることができた。

主人公は上流階級の暮らしをしていたので、一部の金持ちに限られた暮らしぶりだったかもしれない。だがあの時代は港があった神戸があんな風に欧風文化を取り入れ、和と洋が入り混じった独特の文化が形成されていた時期というのを感じ取れ、非常に興味深かった。その一方で、第二次世界大戦が迫り、洋物は使うでない、と言った制限が始まりだしているから更に複雑である。

 

時計やアクセサリーを買うシーンが印象的で、百貨店などではなく、人影の少ない路地裏のような場所で少し怪しげな人が個人で売っていた。現代であのような販売をしている人を見かけるとどうも怪しいと思ってしまうが、昔はあのような物のやり取りは当然だったのだろうかと、今の人と変わらないような装いをしていても、そこは戦前ということを気付かされる。

時計の購入に限らず、布を頂けば洋服を仕立てようという話になったり、わざわざ山へ氷や山菜を採りにいったり、そういったことからもほとんどの現代人(都会に限るかもしれないが)経験することのない昔懐かしい生活を垣間見ることができる。

 

そういった、昔ならではの暮らしぶりや、画を楽しむ映画だと個人的に思った。とても楽しませてくれる、面白い作品だった。