そら飛ぶ映画好きのひとりごと。

感想は抽象的であり、単なる感想に過ぎません。

ダンケルク Dunkirk

2017年公開

監督、脚本:クリストファー・ノーラン

出演:トム・ハーディハリー・スタイルズケネス・ブラナー

アカデミー賞8部門ノミネート

 

戦争映画。第二次世界大戦における、ダンケルクからの大撤退。(ダイナモ作戦というらしい。)

この映画を見た時に感じたことは、「サウルの息子」に雰囲気が似ているなぁということ。

 

そして、

“生きることに対する執着”

“人は簡単に死んでしまう”

この2つが見て取れました。

 

 

タランティーノ監督が作るような、見ていて楽しくてかっこよくて、こんなもの作ってみたいと思えるようなものが私の好きな映画のジャンルではありますが、

このダンケルクのような映画は、“人間の本質”を表現しているかのようで、これまた考えさせられる作品でなかなか見応えありでした。

 

 

まず、「サウルの息子」に似ていると感じたところの第一は映像的な部分です。

サウルの息子」ではずっと主人公をカメラで追っています。

サウルの息子のように、最初から最後まで主人公だけをカメラで追い続けるというわけではないですが、このダンケルクにおいても、部分的にそういった手法が取られています。

 

それにより、戦争に巻き込まれた片隅の人間の視点、というものが強調され、観ている私たちもまさにその場にいるかのような感覚になります。

自分のすぐそばで人が死んでしまうなど、砲撃が少しでもずれていたら自分(主人公)に当たっていたのか、、と思わせられ恐怖心が煽られます。

生と死がまさに隣り合わせの状況を垣間見ることができます。

空爆が始まると、みんな一斉にしゃがみこむ状況とか、これが戦争が起きているその場に居あわせた人々の行動なのか、これが“現場”での人間の実態なのか、と思いました。

 

また、もう一つサウルの息子ダンケルクの特徴として、映画ならではの音楽的盛り上がりがないことです。

ずっと淡々としていて、聞こえる音は爆撃や銃砲など。すごく静かに感じられます。

それゆえに、いつ空爆に襲われるか分からない恐怖心や、戦争に居合わせるということの緊張感をリアリティを持って表現されているような気がしました。

 

 

 

“生きることへの執着”

主人公含め兵士たちは最後まで生きることを諦めません。乗り込んだ船が空爆に遇い何度沈んで死に掛けても、また新たな船に乗り込み絶対に祖国に帰ることを諦めず、前へ進み続けます。

“生きなきゃいけない”という本能に従うかのように。

 

“人は簡単に死んでしまう”

さっきまで隣にいた人が空爆により、船が沈んだことにより、漏れた石油に火がついたことにより…死んでしまうシーンがいくつも描かれていました。

あぁ人はこんなにも簡単に命を落としてしまうのか、言葉が出なくなります。

 

人間の行動心理についてとても興味がありますが、この映画において、逃げることを命じられた末端と言えるような、一兵士の行動について見ることができました。それは非常にリアリティを持って表現されていて、またひとつ勉強になりました。

 

 

泣けるシーンがありました。

兵士たちをダンケルクまで船で迎えに行く一般市民のおじさんにフォーカスが当てられているのですが、そのおじさん、やたらと戦闘機に詳しいんです。

戦闘機を見もせずにエンジン音だけで、あれはスピットファイアだ、と言い当てます。すごいマニアだなあと思いながら見てると、終盤で、息子が空軍だったと話し始めるんです。

そして、戦争により亡くなったと言います。

息子が軍隊に入り、国のために戦うことが誇らしかったんだろうなぁと。子供の関わることが好きでやたら詳しくなっちゃう感じが、子を持つ親としてはよくあると思いますが、その親心がなんとも泣けました。

 

 

そして、この映画は映像が美しかったです。

実際にダンケルクの地でも撮影を行ったそう。

レヴェナントもそうですが、やはりCGではなく、本物の自然の地を使うのはいいですね。もう本当に美しい。

 

 

映像が美しく、戦争終結の様がリアリティを持って表現され、物凄い数のエキストラを起用した大規模な映画でとても見応えがあります。ぜひ見てみてはいかがでしょう。