そら飛ぶ映画好きのひとりごと。

感想は抽象的であり、単なる感想に過ぎません。

メアリーの総て Mary Shelley

監督:ハイファ・アル=マンスール(女性、サウジアラビア出身)

主演:エル・ファニングマレフィセントネオン・デーモン

 

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フランケンシュタインの作者、メアリー・シェリーがフランケンシュタインを生み出すまでの物語。

 

非常にいい作品でした。

映像や音も綺麗だし、ファッションも素敵でした。

何より、エル・ファニングが上手い!

 

彼女を初めて見かけたのは、2014年の『マレフィセント』でした。ちょろちょろ映画出てるな、とは思っていましたが、少し前の『ネオン・デーモン』で注目度が上がったんじゃないかな?と認識しています。

 

絵に描いたような綺麗なブロンドと透き通るような白い肌を持った女優ですが、ネオン・デーモンではなかなか特別感溢れる雰囲気を醸し出していましたね。

 

ちょっと影のある性格を持った女の子の役が静かな声と合うんですよね。それでいてかつ、白くてエルフみたいで存在が際立つので、「美人だけど変わった子」みたいな役柄が合うなと個人的に思います。

 

 

それはさておき、今回の『メアリーの総て』では、演技の細やかさが増していて、とても「上手い」と思わせられました。

3歳から演技をしているので今20歳にも関わらずキャリアが長いですが、着実にスターへの道を歩んでいますね。今後またどんな演技を見せてくれるのか楽しみです。

 

 

 

この『メアリーの総て』は、かの有名なフランケンシュタインの作者、メアリー・シェリーがその作品をいかにして生み出したか、ということが描かれています。

 

恥ずかしながら、私はフランケンシュタインを読んだことがありませんでした。

なので映画終わって速攻文庫を買い、読んでいるところです…。(笑)

 

 

 

この映画の何が良かったか。

それは、“特に”女性が勇気や力をもらえるという点だと思います。

 

今の時代、女性軽視についてかなり厳しくなっていますよね。

女性を見下すようなことがあれば、それは徹底的に非難されたり、女性が男性よりも家庭的負担が大きいことが未だ問題視されていたり…

 

そんな中で、女性が社会の常識(女が男と同じように活躍することはあり得ないみたいな世の中)の中で奮闘し、自分(主人公)つまり女性の立場を確立していく、みたいな題材の映画が増えているな〜と思います。

 

同じ女としては、過去に素晴らしい能力があったにも関わらず、“社会の常識”という名の害悪に潰されてしまった人たちが多くいたという事実を知ることはとても必要なことだと思います。そして、今にも名を残している女性がどのように戦い、どうやって立場を確立していったのか、というエピソードはとても勉強になります。このようなテーマの映画が増え、目にすることが出来るというのは、非常にありがたいことだと思っています。

 

『天才作家の妻』という映画がもうすぐ公開ですが、この映画も「女が小説を書くなんて、自分の思想を本にするなんて、あり得ない!」みたいな常識に潰された女性の話ですよね?(確か)

 

 

このようなことが事実だったと思うととても悲しいし恐ろしいですよね。

私が生きる今の時代でも男女平等について問題があるとは言っても、過去に戦ってきた女性の話を耳にするととても恵まれた時代に生まれたな、と思うわけです。

 

 

 

 

この『メアリーの総て』で、メアリーはフランケンシュタインという“怪作”を生み出すわけですが、初めは「あなたは女性だから出版できない」って言われるんですよ。“女性だから”っていう物凄い偏見による信じられない差別的発言がなされるわけです。

 

女がこんなもの書けるわけない、とか言う訳です。昔は女性に人権があったとは言えないような時代もあったと、なんとなく知ってはいるものの、そんな直接的でなんの根拠もない発言により、いとも簡単に押しつぶされていたのか、と思うとやはり衝撃でした。

 

出版社に女性という理由だけでことごとく断られてきた中、メアリーはようやく出版してくれるところと巡り会えました。しかし、著者を明かさず、かつ旦那の紹介文(?だったか忘れましたが…)を載せればという条件の中で。

そこで、映画を見ている誰もがもやもやし、悔しいな〜って思っている中、エル・ファニング演じるメアリーが、あり得ない女性差別に対する悔しさを旦那に向かって叫ぶんですよ。

「あなたにこの悔しさが分かるのか?!」ってね。

よく言った!と心の中で拍手ですよ。

 

映画では、メアリーの旦那はろくでなしとして描かれていましたが、性根は腐っていなかったのだな、と最後に思わせられました。

というのも、そのメアリーの言葉に胸を打たれたのか、この素晴らしい作品を産んだのは、我が妻メアリーだと世に公表する訳です。

 

だからこそ、今を生きる私たちにも、フランケンシュタインの作者はメアリー・シェリーという女性で、彼女が18歳の時に描いた作品なんだ、ということが分かるのです。

 

彼女が悔しさを包み隠さず、思いをぶちまけ、そして戦ったからこそ、あり得ない女性差別がまかり通っていた時代に生きていたにも関わらず、私たちは正しい作者を知ることが出来るのです。

 

 

“戦う”というのは具体的にどういうことかというと、「行動し続ける」ということです。

メアリーはまず、小説を書いてみた。

そして、どんなに跳ね除けられても出版するというところに巡り会えるまで、出版社に持ち込み続けた。

自分の名前が載せられないことに対する悔しさ、本音を包み隠さずぶちまけた。

 

ただ心の中で悔しい、と思っていたり、あれしてみたいけどやってみたいなと考えたりしているだけでは何も変わらないんです。

こうしてみたい、とか現状を変えたい、夢を叶えたいなど思うことがあるのであれば、「行動し続ける」ことが大切なんだなと、強く感じさせられる映画でした。

 

“特に”女性が力をもらえる映画です。

もちろん、男性だって勇気をもらえる映画です。

 

 

ぜひ見てみてください。まだまだ上映していますよ〜。