歓びのトスカーナ LA PAZZA GIOIA
2016年 イタリア
監督:パオロ・ヴィルズィ
主演:ヴァレニア・ブルーニ・テデスキ、ミカエラ・ラマツォッティ
他の人よりちょっと弱くて、繊細で、元気でいるには誰かの力がいるような、そんな女性たちが集まる施設で、おしゃべりが止まらないベアトリーチェと、体中にタトゥーを彫っていて、言葉による自己主張がほとんどない、なんだか影のあるドナテッラが出会い、2人で過ごしていくうちにお互いにとってかけがえのない存在になる様が描かれています。
心の病と一言で言い放つには、ふさわしくないような気がして、回りくどい表現をしました。
鬱や強迫性障害や、様々な精神病がありますが、それらを単に“病気”と一言で片付けてしまうのはなかなか難しいものであると、この映画を見て感じました。
どちらかというと、ドナテッラの変化の方が大きく描かれています。
ドナテッラは自分の子供に会えないことが原因で心が弱っています。
いかにもチャラそうな、クラブのオーナーの男との子供なんですが、その男と別れちゃって、1人で育てなきゃいけなくなった。
そのあたりの詳細は描かれておらず、こちらの想像に委ねられます。
その男はもう別の女性と結婚して、子供もいます。彼にとってドナテッラはただの遊び相手だったことが想像されます。
だから彼女は捨てられた。そのせいで不安なのかなんなのか、泣いてばかりいたら周りから“心が病気だ”と言われて、彼女では子供を育てることができない、という判断を下される。
それゆえ、子供は主に施設に預けられてしまうのです。それにより、また不安が募る。
こんなにも大切な存在なのに、一緒にいられない。このままどんどん引き剥がされていき、もう2度と会えなくなるのでは?という不安にかられ、泣いてばかりいたら“病んでる”というレッテルをどんどん貼られ悪循環になっています。
まあ彼女はそれに気づいているんですが、寂しさに打ち勝つことができないんです。
そしてとうとう魔が差してしまい、それが原因で息子と完全に引き剥がされてしまいます。
ドナテッラの印象的な言葉があって、「生まれた時から寂しかった」。
彼女はただただ感受性が強くて繊細なだけ。それがたまたま人の目には異質な存在のように映ってしまい、“病気”なんて言われてしまっている。
愛する人と一緒にいたいだけなのに。そうしたら、元気でいられるのに…!
昔から彼女は大好きな人と引き剥がされています。(はっきりと述べられていませんが観ていてこうなのかな?と思ったことがあります。)
まずは父親。父親はアーティストです。彼女は父親が作った曲を携帯に入れ、毎日聞いています。そして、タトゥーにお父さんのバンドの名前を彫っています。父親の話をするときはすごく目が輝いています。
父親のことがめちゃくちゃ好きなのに、彼女の両親は離婚していています。あとはアーティストとして活動しているからもともとあまり家にいなかったのかもしれません。だから簡単には会えなかった。寂しかった。
愛する息子の父親。結婚していたかどうかは不明です。恐らくしていないと思われます。私を一番に想っていてくれていたはずなのに、捨てられた。子供は自分の子じゃないと言い張る。子供を連れているところに遭遇しても、彼は子供のことを少しも見てくれません。寂しかった。
息子。「私は泣いてばかりで病気だと言われ、子育てはできないといわれた。」だから一緒にいられなくなってしまいました。寂しい。
幼少期のことが分からないので想像するしかないんですが、感受性の強い女の子が、繊細なまま大人になったという感じがしました。
ベアトリーチェですが、本当にうるさいです。(笑)
しかもなんだか声質までが、そのおしゃべりが止まることを知らないキャラクターと合っていて、更にうるささを助長していました。
しかもイタリア語って巻き舌のような喋り方をするので、もう勢いが凄まじかったです。
『君の名前で僕を呼んで』という映画がありましたが、あれも確かイタリアが舞台で、イタリア人のおじちゃんおばちゃん達がめちゃくちゃ早口&大声でまくしたて言い合うシーンがあって、観ていて圧倒されたことが思い出されました。
こんなベアトリーチェとドナテッラが本当に意気投合するの〜?なんて、私は超疑ってました。DVDのパッケージには2人が意気投合する的なことが書かれていたので。
初めは、なぜこのおしゃべりマシーンベアトリーチェが心に不安を抱える人たちと同じ施設にいるのか謎でした。
どう見ても明るい。ブランド物、ラグジュアリー、香水、化粧品、などなどに囲まれて、楽しそうにしているじゃあないか。
人生謳歌しているように見える!
でも実際は彼女も寂しい。だから話し続けるし物を集め続けるのだろうなと思います。
ベアトリーチェも好きな人に近寄るなと言われ、おしゃべりで誇張が行き過ぎるから親にまで鬱陶しがられています。
でも、それが原因とは思えないというか。
好きな人に暴言を吐かれてもめちゃめちゃポジティブに捉えてるし会えて嬉しくて、私はまだ愛されていると思っているような描写があったので、好きな人と結ばれないことが寂しさの原因とは言い切れないような気もして。
ベアトリーチェの心の闇は見えづらいし、難しくて、一回観ただけではあの人の心の中を暴き出すのはちょっと私じゃできないです。
結果として2人がすごく相性がよくて、お互いにとってかけがえのない存在になるというのはいいですね。
人は1人でいるよりも誰かといた方が強くなれるしポジティブになれるもんですね。
あとは、本当に相性ぴったりの運命的な相手は必ずいるんだなぁと思いました。
小さな幸せに浸り、日々ポジティブに生きよう〜と思える映画です。
そういえば、イタリアの街並み素敵すぎますね。
映画だからデフォルメされたイタリアなんだろうけど、街並みの美しさときたら…。
明るい色調の建物に緑豊かな自然が広がり、海も美しい。
黄色、緑、オーシャンブルーですよ!暖かな色味ですよ。
フランス映画、例えば『アメリ』や『ミッド・ナイト・イン・パリ』を見たときも、デフォルメされたパリを見ては感激しました。
フランスの街のカラーは、原色のイメージですね。特に赤、濃い緑が似合う。イタリアとは打って変わって、若干ダークな色合いですかね〜。
ヨーロッパはおしゃれですよね。まあどの国にもそれぞれ個性を持った素敵な景色が広がっていますが。
そうそう、エンディングの曲ですよ。もう涙が出ないわけがない。(笑)
Senza Fine(センツァ・フィネ)
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流すタイミングとクレジットのタイミングがいい。